田辺市立新庄小学校

 

所在地    和歌山県田辺市

建築主    田辺市

建築設計者  共同設計

構造設計者  山田憲明構造設計事務所

       山田憲明 蒲池健

施工者    山幸·濱本組特定建設工事共同企業体

建物規模   延床面積 2929㎡

       階数   地上2階

主要用途   学校

主要構造   W一部RC、直接基礎

竣工     2010年

掲載     文教施設

受賞     ウッドデザイン賞

 

地元のスギ一般製材でつくる2階建て学校校舎

■防耐火計画

 扇形プランのホール棟から西側に普通教室棟、北側に特別教室棟が延びたL形プランを持つ、延床面積3000㎡弱、2階建ての木造主体の校舎である。地元の新庄愛郷会から寄付される紀州産の定尺材(杉と檜合わせて約300㎥、最大サイズ120㎜×360㎜×6m)を化粧あらわしの構造材として活かすために、もえしろ設計のかからない「その他木造」で計画することにした。ホール棟と普通教室棟との間に耐火コアを設けることで、1000㎡以下の普通教室棟とその他の2000㎡以下の2棟に分け、更にホール棟と特別教室棟との間に防火壁を設けて1000㎡以下に区画した。耐火コアと防火壁は、強化石膏ボードを用いたメンブレン型耐火木造の採用も検討したが、後述のようにRC造とした。

 

■耐震計画

 片廊下や中廊下型校舎の構造計画における主な課題のひとつは、窓側と廊下側の開放性と桁行方向の耐震性の両立である。普通教室棟と特別教室棟では、これを解決するために構造用合板による高耐力壁(最大耐力は壁倍率相当で約8倍)を用いた。梁間方向は教室間の間仕切壁に同じく高耐力壁を配置して耐震性を確保した。階高が大きいことから標準的に柱材に使われる正角の4寸正角材では座屈強度が不足するため、平角材120㎜×180㎜を用いて強軸を壁面外方向、弱軸を壁面内方向に向けて配置した。

 ホール棟は、多目的ホールの円弧部分の外壁をガラスカーテンウォールで実現するために、ホール両端に配置した耐火コアと防火壁をRC造でつくり、全ての水平力を負担させることにした。ホール、普通教室、特別教室の各棟間にはエクスパンションジョイントを設けることで、平面混構造やL型プランで発生しやすい耐震計画上の偏心を回避した。

 

■屋根の架構計画

 普通教室棟の2階教室は、7.65m×8.1mの広さと片流れ屋根に沿った勾配天井を有する無柱空間である。この空間の屋根を支えるために、水平に陸梁を設けるキングポストトラスなどが考えられるが、内部空間が低くなってしまう。そこで、屋根勾配によって必然的に天井が高くなる廊下の上部スペースを利用し、教室と廊下の境界柱を支点として両側でバランスさせる片持ちトラスを設けて教室中央部まで跳ね出し、この上に出桁と垂木を載せる架構とした。使用部材は最大でも120㎜×180㎜×6mの定尺材で、内部空間の高さを確保しながら屋根を支えている。

 特別教室棟の2階教室も個々の部屋は同様の広さであるが、普通教室棟と異なり、全体として切妻屋根形状の下、中廊下の両側に教室が配置されるため、先述の片持ちトラスを中廊下から両側の教室に跳ね出すことにした。廊下上部にはトラス下弦材がクロスした特徴的な架構が化粧あらわしとなる。

 多目的ホールは、中心角90度、半径16.7mの扇形平面を持つ2層吹き抜けの大空間で、屋根は円錐を四分の一にカットしたような形状をしている。これらの設計条件を踏まえて、定尺材で組んだ放射方向のトラスを7.5度間隔で架け渡すことにした。束と斜材120㎜×120㎜を下弦材60㎜×120㎜で挟む組み方をすることで、木造トラスで課題となる接合部での混雑を解消した。

 各屋根架構の接合部には、木材同士の支圧で応力伝達をさせる嵌合接合を使い、高価な製作金物をなるべく減らすとともに、美観を実現している。これらの接合部は、地元の設計事務所が施工図を作成し、全て大工によって加工されている。

 

 

■2階床の架構計画

 1階教室の無柱空間をつくるための2階床架構は、勾配屋根によって生まれる高さ方向のスペースが存在しないため、屋根で用いたようなトラス架構等を採用しにくい。そこで、高さ方向のスペースがあまりなくてもスパンを飛ばせるよう、ゲルバー梁と重ね透かし梁を組み合わせた架構を採用した。 

 重ね透かし梁は、隙間を開けた上下弦材の間にずれ止めのジベルを入れることで、梁としての剛性と耐力を一体材に少しでも近づけることを目的とした組立梁の一種である。ここでは上下弦材に120㎜×300㎜、ジベルとして弦材と繊維方向を揃えた飼木120㎜×240㎜を用い、互いに20㎜ずつ嵌め合せた木口部の支圧でジベル効果を発現させている。

 2階図書室の床架構には、上述の重ね透かし梁では過大な積載荷重を支えられないので、木材の両側に溝形鋼で補強したハイブリッド梁を用いている。