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本山寺五重塔保存修理

 

所在地    香川県三豊市

建築主    七宝山持宝院本山寺

建築設計者  監修:本山寺五重塔整備員会

       設計:多田善昭建築設計事務所

構造設計者  山田憲明構造設計事務所

       山田憲明 辛殷美 林弘倫

施工者    伸和建設

建物規模   延床面積 66.82㎡

       階数   地上5階

主要用途   寺院

主要構造   W、直接基礎

建立     1910年

設計期間   2013年7月~2019年1月

工事期間   2015年9月~2019年1月

掲載     新建築2019年10月号

​五重塔の構造診断と補強

 明治末に建てられた五重塔の解体修理工事に伴う構造診断と補強プロジェクトである。近年、塔身の顕著な傾斜や組物の割れ、床の不陸がみられたため、2重台輪以上を解体しした半解体保存修理工事を行うことになった。

 日本を代表する構造や歴史の専門家らで構成された整備委員会や経験豊富な大工棟梁の知見を結集させ、当初のシステムと耐力を可能な限り評価しつつ補強方法を慎重に決定した。

 現況調査により劣化・腐朽・割裂などの経年劣化を把握した上で、現況の五重塔における構造の仕組みや様々な外力に対する性能(鉛直支持、耐震、耐風性能)を検証し、目標性能に満たない場合には構造補強方法の提案と詳細設計を行った。

 鉛直荷重に対する検討では、10㎝超もの床不陸、軒先のたわみ、柱盤や台輪の湾曲や折損、枕木の圧縮破壊といった経年変化の原因として、外周組物の部分欠落・乾燥・クリープによる過大な収縮、過小な柱盤断面があることを特定し、組物隙間への飼木挿入による圧縮力伝達機構の確保と収縮抑制、斜張丸鋼による丸桁の荷重負担の軽減といった構造補強を行った。

 

 地震荷重に対する検討では、極稀地震時に腰貫のない3~5重のいずれかの応答変形が集中するモードが出たため、これらの外壁板壁を厚くし(既存厚18㎜→改修後36㎜)ダボ式の落とし込み板壁に改修することで水平剛性を高め過ぎることなく、大変形レベルでの耐力を確保した。

 

 風に対する検討では、極稀暴風時における1~2層の耐力不足を補うため、台風時期のみに設置する着脱式のワイヤーブレースを用意した。

 

 相輪を支える心柱は、極稀地震時の応力に耐えられるよう相輪根元の継手部を鋼板で補強するとともに、当初の懸垂形式に戻した。心柱最下部の重量箱は、塔総重量約150tの約1%程度と軽く、耐震性能の向上に寄与させることが難しいことから、緩衝材としてのゴムを挟み、水平方向の大きな動きを拘束した。

パンフレット1cトリミング.jpg
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