Y S D Yamada Noriaki Structural Design Office
山田憲明構造設計事務所
竣工写真:ヴィブラフォト 浅田美浩
あわくら会館
所在地 岡山県英田郡西粟倉村
建築主 西粟倉村
建築設計者 アルセッド建築研究所
倉森建築設計事務所
構造設計者 山田憲明構造設計事務所
山田憲明 古矢渉 赤阪健太郎
施工者 梶浦建設
建物規模 延床面積 3,461.31㎡
階数 地上2階
主要用途 庁舎,生涯学習施設
主要構造 W+RC
設計期間 2017年7月~2018年7月
工事期間 2018年11月~2021年4月
掲載 新建築2022年5月号
建築技術2022年3月号
受賞 第25回木材活用コンクール 優秀賞
((一社)全国木材組合連合会会長賞)
屋根形態や用途に合わせた木造屋根架構と格子耐力壁
執務スペースの屋根架構では、2寸5分という低勾配の切妻形状に適した「木造サスペントラス」を考案した。山形の上弦材と2連の下弦材の間を束で連結したもので、トラスとサスペンションを組み合わせた構造である。下弦材がスパン中央で持ち上がるのが一見奇異に感じられるかもしれないが,力が効率よく釣合う合理的な形態である。この構造形態は元々ロベール・マイヤールがキアッソの倉庫(1925年)においてRC造フィーレンディール形式で採用したのが最初で、今回の木造架構では上弦材をダブルにして継手をずらすことで偏荷重に対応している。
あわくらホールの屋根架構では、構造合理性や意匠性だけでなく音響にも配慮した「波形曲面重ね透かし梁」を考案した。小径木材を縦に重ねてより大きな断面性能を得る重ね梁や重ね透かし梁という手法があるが、これを徐々に位置をずらしながら重ねていくことで、屋根を支える木造架構がシームレスな天井面を創出する。弦材の間に飼木を入れて透かすことで、ヴォールトシェルとしての面内力を効率よく伝達させるとともに、吸音効果を期待させている。
庁舎と図書館は大空間と開放性が必要で、耐力壁の配置スペースが限定されるが、重要度係数1.5倍割り増した地震力に耐えられる耐震性能が求められる。特に,建物の正面となる北面と百森ひろばの外壁は,高い水平耐力と透過性を兼ね備えた耐力壁が必要であったため、縦格子耐力壁を開発した。三本の間柱(幅12cm×成24cm)の間に飼木を嵌めて構成した縦格子を上下枠材にほぞ差ししてパネル状にし、軸組にセットして構造用ビスで留め付ける。縦枠と間柱との間に飼木を設けなかったのは、ビス留めのスペースを確保するとともに、透過性を高めるためである。各間柱と上下枠材は二本のLSBで接合することでモーメント抵抗を期待し、美観と性能を高めている。