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​竣工写真:藤塚光政

エバーフィールド木材加工場

 

所在地    熊本県上益城郡甲佐町府領892

建築主    エバーフィールド

       代表/久原英司

建築設計者  小川次郎/アトリエ・シムサ

       小林靖/kittan studio

       池田聖太/3916

構造設計者  山田憲明構造設計事務所

       山田憲明 竹原遼

施工者    エバーフィールド

建物規模   延床面積638.98㎡

階数     地上1階

主要用途   工場(木材加工場)

主要構造   W

設計期間   2020年5月〜2022年2月

工事期間   2022年3月〜2023年12月

掲載     新建築2024年10月号

       建築知識ビルダーズNo.58

さまざまな形態に適応するトラスユニットの
レシプロカル合成ラーメン構造

 プロポーザルの課題「県産流通木材を使用した,架構自体が美しい新しい木造空間」,小川次郎さんの建築コンセプト「生物のような構造」というふたつの問いに対し,同じ要素やシステムの繰り返しの構成でさまざまな形態に適応でき,建設行為自体が大工の訓練にもなることを意図した,三角形トラスユニットのレシプロカル合成ラーメン構造を発案した.

 木造レシプロカル構造は主に7~8mスパンを架け渡す屋根構造に使われてきたが,単材をトラスに置き換えて面外方向の曲げ性能を高め,屋根のみならず壁もレシプロカル構造にすることで全体で合成ラーメン構造を形成している.これによって地震・暴風時の水平力や曲面屋根からのスラストに対する支持性能が高まり,ほぼ耐力壁のない約20×30mの開放的な無柱空間と最大6mの軒跳ね出しを実現した.トラスユニットは,互いを15mmずつ切削したシングル材をダブル材で嵌合する関係を循環させて接合部を簡素化し,縦横に勝ち負けをつけて配置することでレシプロ化している.また梁間方向の半スパン分を地組して上架し,上部では一部のダブル材を連結することで,「支える」「支えられる」関係が循環するレシプロカル構造の建て方を可能にした.

 この構造は整形な建物に対して汎用性が高いシステムであるが,本建物のような複雑なジオメトリーにも適合できる拡張性を併せ持つ.全カ所のディテールが異なる比類なき木構造に施工は困難をきわめたが,施主兼施工者であるエバーフィールド社の大工と最先端の木造ファブリケーターの協働によって木造レシプロカル構造の新しい境地に辿り着いた.

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